- あと
- I
あと【後】〔「跡(アト)」と同源。 「跡」の意味の拡大したもの〕※一※ (名)(1)背中の方。 うしろ。
「~から来る」「~につづく」
(2)以後。 のち。⇔ 先「泣いた~にすぐ笑う」「お金は~で結構です」「宿題は~でやるよ」(3)のちの事態。 のちのちのこと。「~のことも考えずにやって失敗する」
(4)ある事の結果, 残ったもの。「~は, 全部お前にまかせる」
(5)ある事の終わったあとに残った感情。 なごり。「父の~をしのぶ」
(6)子孫。「~が絶える」
(7)後任の者。 次に来る人。「退任した社長の~はもう決まっている」
(8)以前。⇔ 先「『まあ色のわりいことは。 真青だよ。 いつ時分からわるいのだえ』『なに十五, 六日~からよ』/人情本・梅児誉美(初)」※二※ (副)数詞に付いて, 今よりそれだけ超過するさまを表す。 さらに。「~五分で終わる」「~三人すわれる」
~が無・いこれきりで, 残された余裕はない。~から後からある物事がとぎれなく連続して起こるさま。 次から次に。「~わきあがる雲」
~にも先にも今までも, またこれからも。 それ一回きりのことであることを強調していう。「あんなにこわい思いをしたのは~あの時だけだ」
~の雁(カリ)((ガン))が先になるあとの者が先に進む者を追い越す。 後輩が先輩を追い越すことなどにいう。~の祭り(1)祭りの翌日, 供え物を下げて飲食すること。 後宴。(2)〔祭りのすんだあとの山車(ダシ)の意から〕時機を逸してかいのないこと。 ておくれ。「悔やんでも~だ」
~は野となれ山となれ当面のことさえうまくいけば, あとはどうなろうとかまわない。~へ引かない自分の意見・主張に固執し, 譲歩しない。「言い出したら~ない」
~へも先へも行かぬ進退きわまる。 にっちもさっちもいかない。~を弔(トムラ)・う死者の霊を慰めるために供養をする。~を引・く(1)(飲食物などについて)引き続いて欲しくなる。(2)事の影響があとに残る。II「正月気分が~・く」
あと【跡・迹】〔「足(ア)所(ト)」の意〕(1)足で踏んだ所や車の通り過ぎた所に残るしるし。「廊下に足の~が残る」「車輪の~」
(2)ある事が行われた, あるいは存在したことを示す証拠。 また, その場所。「苦労の~が見える」「手術の~」「古い都の~」
〔建造物には「址」, 傷などには「痕」とも書く〕(3)人の残したもの。 (ア)定まった様式。 先例。 手本。「師の~を追う」(イ)家督。 跡目。 また, それを継ぐ人。 「~を継ぐ」
(4)足の方。「妻子(メコ)どもは~の方に/万葉 892」
(5)字。 筆跡。「古めきたる黴(カビ)くささながら, ~は消えず/源氏(橋姫)」
~の白浪(シラナミ)船の通った跡に立つ白波。 すぐに消えてしまうところから, はかないことにたとえる。「~はまことにこそ消えもて行け/枕草子 306」
~を追・う(1)(「後を追う」とも書く)追いかける。(2)死んだ人を慕って自らの命を絶つ。 また, ゆかりのある人が死んだあと, 引き続いて死ぬ。「恋人の~・う」
~を隠・す行方がわからないようにする。 隠遁(イントン)する。「日野山の奥に~・してのち/方丈記」
~を暗(クラ)ま・す失踪(シツソウ)する。 行方をくらます。~を絶・つ(1)完全にとだえる。「抗議が~・たない」
(2)消息を絶つ。「アフリカの奥地で~・った」
~を絶・ゆ(1)人の往来が絶える。 訪れる人がなくなる。「今は浅茅(アサジ)わくる人もあとたえたるに/源氏(末摘花)」
(2)世間から姿を隠す。 隠棲(インセイ)する。 また, 消息が絶える。「深き山に~・えたる人だにも/源氏(澪標)」
~を垂(タ)・る〔「垂迹(スイジヤク)」の訓読み〕仏が衆生(シユジヨウ)を救うため, 仮に神の姿となって現れる。「住吉の神。 …まことに~・れ給ふ神ならば, 助け給へ/源氏(明石)」
~をつ・ける足跡をつける。 跡形を残す。(2)後ろからひそかについて行く。 尾行する。~を取・る家督を相続する。 跡を継ぐ。~を濁(ニゴ)・す去ったあとを乱れたままにしておく。III「立つ鳥~・さず」
あと【阿堵】「阿堵物(アトブツ)」の略。
Japanese explanatory dictionaries. 2013.